概要

時系列モデルのモデル診断において, (修正)かばん検定,(modified) portmanteau test, は, m個の残差自己相関の2乗の加重和から定義され,実用的に使われている. しかしながら,近似的にカイ2乗検定とするために, mを適度に大きくすることが要求され,これがサイズの不安定化と 検出力の低下の原因とされている. それゆえ有効なmの発見は未だ未解決問題である. この問題に対し,Ljung (1986, Biometrika) は,mが小さい場合でも 有効な近似分布を提案し,数値実験でその有効性を主張した. 本講演では,Ljung (1986, Biometrika) とは異なるアプローチで, 理論と数値実験の両面で,かばん検定の改良について議論する. 具体的には,mが小さいときのカイ2乗分布の近似に対し, かばん検定統計量には,母数の値に依存する正の確率変数(バイアス)がある. それゆえこのバイアスを補正しようというものである. また,mを小さくすることでかばん検定の検出力が改良されることも示す.