概要

本論文では,日本の株式市場での株式収益率に予測可能性があるか否かを明らかにすることを目的に,Campbell(1991)に倣ってCampbelll and Shiller(1988)の対数線形近似の手法と分散分解の手法を利用した分析を行った.日本における超過収益率の分析の結果,予期されなかった株式超過収益率の変動の分散に対して貢献を比較すると,いずれのサンプルにおいても将来の配当支払に関する期待の見直しの分散が大きく貢献しているものの,将来の超過収益率に対する期待の見直しの分散が貢献が一定程度確認出来るという結論を得た.さらに,1980年代における日本の株式市場の特殊性を考慮し,1980年代をサンプル期間から除いて,株式超過収益率の変動の分散に対する貢献を比較すると,将来の超過収益率に対する期待の見直しの分散が貢献する割合が相対的に大きくなった.また,超過収益率の予測方程式に構造変化がある可能性を考慮した.その結果,超過収益率の分析では1989年12月に構造変化が観測された.構造変化点以前のサンプルと以降のサンプルを用いた分析結果とフルサンプルの結果を比較すると,構造変化点以降のサンプルの方が,超過収益率についての予測可能性に関して,安定的な結果を得られている事が発見された.