概要

有限母集団における平滑化統計的汎関数の中心極限定理に関して考察を行う。 官庁統計や社会調査などの分野においては、母集団サイズと比較してはるかに 大きい標本が抽出される場合があり、このような問題に対して、古典的な i.i.d.標本を前提とした大標本理論を援用することは適切とはいえない。 本報告では、有限母集団からの非復元単純無作為標本に基づいた平滑化統計的 汎関数の漸近正規性を証明する。
統計的汎関数とは経験分布関数の汎関数として表現が可能な統計量であり、 bootstrap法に代表される再抽出法やrobust統計学において重要な役割を演じる。 有限母集団において母集団の従う分布関数は離散的なものであるが、 母集団のサイズが十分に大きく連続な分布に近い状況では、平滑化した経験分布関数と、それに基づいた統計的汎関数を考察したほうが良いと考えられる。 本報告では、これら2つの統計量の漸近的挙動に関して報告を行う。 本報告の内容は Fernholz (1991, 1993)がi.i.d.標本に対して示した結果を 有限母集団において示したものである。