Abstract

KPSS検定 [ Kwiatkowski et al. (1992) ]は経済時系列の定常性を検定する方法として実証分析で幅広く用いられているが、小標本下で対象系列が強い自己相関を持っている場合には検定の実質サイズが名目サイズを大幅に超えてしまう深刻なサイズの歪みを引き起こすことが知られている。一連の先行研究で提案されている種々の検定方法ではサイズの歪みの原因をKPSS統計量の分母部分からのバイアス、すなわち誤差項のlong-run variance (LRV)の推定エラーに因るとし小標本下におけるLRVの推定精度を向上させることでサイズの歪みを改善するアプローチをとっているが、シミュレーション結果を考慮するとこれらの方法を用いてもなおサイズのコントロールは満足できる水準には至っていないといえる。この度の報告では従前の定常性の検定の枠組みを再考、新たな視点から帰無仮説を見直すことによりサイズコントロールに成功した新しいKPSS型の定常性の検定を紹介する。なお本検定では従来バイアスの源泉として指摘されなかったKPSS型検定統計量おける分子部分に対するバイアス修正を行っており、こちらの修正方法についても併せて紹介する。