Abstract

本研究は, 1998年1月から2010年7月までの経済産業省の地域別鉱工業生産指数(IIP)を用いて,地域の景気循環と地域間の空間的影響について計量分析を行った. 具体的には, Ohtsuka and Kakamu (2009)で提案された時空間自己回帰 (Spatial autoregressive-autoregressive: SAR-AR)モデルと, IIPの平均成長率が景気拡張期と後退期とで変化するマルコフ・スイッチングモデルを組み合わせ,景気循環と空間的相互関係を同時に考慮するMarkov Switching-SAR-AR(MS-SAR-AR)モデルを提案した.このモデルをマルコフ連鎖モンテカルロ法を用いてベイズ推定した結果, 空間的相互関係を示すパラメータの95%信用区間が0を含まないこと,MS-SAR-ARモデルが空間的相関を考慮しないMS-ARモデルよりも周辺尤度が高いことが明らかになった. この結果は,日本の地域別景気循環の分析において, 空間的相互関係を考慮することの重要性を示している.