Abstract

ファクターモデルの目的は多数のデータ系列から観測出来ない共通変動(ファクター)を推定(抽出)することにあるが,ファクター数が2以上の場合にはファクターの識別問題が発生することが知られている.具体的には,モデルに何の制約も与えない場合にファクター推定量は真のファクターでなくこれを正則変換したものを一致推定しているに過ぎず,このままでは実証分析への応用可能性は極めて限定的といえる.本報告では,同時方程式モデルを不均一分散制約を用いて識別するというRigobon(2003)のアイディアを元にして,ファクターの時系列方向での不均一分散を仮定することにより真のファクターを一致推定できる可能性を呈示する.同時に,近年ファクターの識別問題を扱った研究がいくつか出てきているので,これらの研究の概要についても併せて紹介する.