Abstract

尤度関数が解析的に求まらないモデルや尤度関数の計算が煩雑あるモデルに対しては,従来のベイズ推定の手法の適用は理論的にも実践的にも非常に難しい問題であった.本論文は近似ベイズ計算法(Approximate Bayesian Computation, ABC)という手法に焦点を当て,その最近の展開について取り扱う.ABCは,実際の観測データと尤度関数から発生させたデータが近くなるようなパラメータの値を事後分布からのサンプルとして採択する.尤度関数からデータを発生せることにより,尤度関数の評価を直接行う必要がないことから,非常に便利なベイズ推定の手法として注目を集めてきている.いままで,パラメータ推定やモデル選択の数々のアルゴリズムが提案されてきているが,適用の煩雑性や初期値の選択などといった問題を抱えている.そこで,本論文では既存のアルゴリズムの問題点を克服し,ABCをより有用な統計的手法とするために,(1)パラメータ推定のための新しい手法,(2)新しいモデル選択の手法,(3)ABCの変数選択問題への応用,の3点について採り上げた.