Abstract

トレンドインフレ率とフィリップス曲線の傾きをレジームスイッチング・モデルを用いて推計する新しい手法を提案する。本稿の特徴は、トレンドインフレ率のとり得る値を1%刻みで複数設定し、トレンドインフレ率がそれぞれの値をとる確率を推計している点にある。トレンドインフレ率を離散的に捉えることは、推計結果の直感的な解釈を容易にするだけでなく、頑健な推計結果を得るうえでも有用である。実証分析の結果、日本のトレンドインフレ率は、1990年代後半以降、約15年間にわたって0%であったこと、そして物価安定の目標や量的・質的金融緩和の導入後、トレンドインフレ率が0%から明確に上昇していることが示唆された。一方、米国のデータを用いた実証分析の結果からは、米国のトレンドインフレ率が1990年代後半以降、2%で安定していることが確認された。