経済理論部門は近代経済学と政治経済学の2つの分野から構成されている。近代経済学の分野では,マーシャルに代表されるミクロ経済理論とケインズに始まるマクロ経済理論がその学問体系の基礎となっている。経済理論部門の主要な学部講義科目は「ミクロ経済学」と「マクロ経済学」であり,これらは,学部共通の入門および基礎科目である「経済学入門」,「基礎ミクロ経済学」,「基礎マクロ経済学」,「基礎経済数学」において講義される知識を前提とし,さらに経済理論を専門的に学ぶことを希望する学生を対象に開講される。「ミクロ経済学」の講義内容は,需要と供給および市場均衡の理論を基本とし,不確実性,情報,外部性,あるいはゲーム論など多岐にわたる。「マクロ経済学」では,ミクロ経済学理論に基礎付けられたマクロ経済理論について講義される。また,最近の経済理論の展開に沿って種々のテーマを選択的に採り上げて講義する科目として「現代理論経済学」があり,金融および貨幣的経済に関係する理論を講義する科目として「金融経済論」や「貨幣的経済論」がある。

大学院講義科目としては,経済学研究科のコア科目として開講される「上級ミクロ経済学」と「上級マクロ経済学」を基礎として,一般均衡理論,成長論,不確実性,金融理論,ゲーム論などの分野における最新の経済理論が「理論経済学T,U」および「数理経済学」の科目において講義される。また,「経済数学T,U」の科目では,現代の経済理論を理解するのに必須となっている数学的分析手法を教えることを目的としている。

政治経済学分野では,学部講義科目として「経済原論」,「経済体制論」,「景気循環論」,大学院講義科目として「上級経済原論T・U」を開講している。これらの科目は,マルクス経済学およびスミス,リカード経済学を基礎としつつ,「景気循環論」では現代マルクス派・ポストケインズ派経済学,「経済体制論」では現代の独占資本主義論をも射程に入れて,政治経済学の多様な分野にわたる講義内容を提供している。政治経済学アプローチの特色は,経済主体は相互に独立・対等ではないという現実認識を出発点として,階級・階層間の非独立・非対等な権力関係の分析を通して,市場経済を解明・説明する点にある。