は し が き

経済学研究科長
田 中 勝 人

本報告書は,経済学部・経済学研究科における教育および研究活動を自己評価して,その改善を図ることを目的として作成されたものである。同様の報告書は,1993年の第1号以来,2年おきに作成されており,今回で第8号となる。過去7号までは冊子として公表してきたが,今回からウェブ上での公表に改めることにした。この報告書は,所属教員それぞれにとって,2年間の教育・研究や社会的な活動を振り返り,自己点検をする貴重な機会として定着してきた。また,公表時期を学部長・研究科長の任期終盤としているので,在任中の仕事の内容を記すと同時に,本学部・研究科にとっての将来の課題を検討する場ともなっている。

早いもので,第1号の報告書が公表されて以来,14年の歳月が流れたことになる。当時は,大学院重点化構想が緒に就いた時期であり,報告書は,そのための資料としての役割を果たした。大学院重点化は,大学院教育を学部教育との関連でどのように位置づけるかとの問題を突きつけた。大学院のことを単独に考えるのではなく,学部からの接続が重要な課題となり,学部教育を含めたカリキュラムの見直しが徹底的に行われた。そして,内容と進度によって,すべての科目を3桁の番号を付して段階的に分類することにした。すなわち,すべての科目を,学部入門科目からなる100番台科目,学部基礎科目の200番台科目,学部専門・発展的科目の300番台科目,大学院入門科目の400番台科目,および大学院専門科目である500番台科目に分けることとした。その際,100番,200番および400番台科目の中の特に重要な科目をコア科目に指定し,一部選択を認めた上で必修とした。このうち,400番台科目は,意欲ある優秀な学部生ならば履修可能なものとした。コア科目や新規科目の設定は,幾多の変遷,試行錯誤を経て,現在に至っている。

さらに,2004年度から本学が国立大学法人へ移行されたことを契機に,学部・大学院教育一体化の取り組みは促進された。その一つが,学部卒業後,追加的に大学院修士在籍1 年で,学士号の他に修士号も取得して,高度専門職業人となることを可能にした「5年一貫教育システム」の創設である。2006年3月には,この制度による初めての卒業生を社会に送り出している。

大学院教育では,上記の他に,本研究科と本学法学研究科の間で準備が進められてきた「国際・公共政策大学院」の設置が認められ,2005年4月から発足した。これは,国際企業戦略研究科,法科大学院に次いで,本学第3の専門職大学院として機能することとなった。

研究面では,21世紀COEプロジェクトに本研究科と本学経済研究所のジョイント・プロジェクトである「現代経済システムの規範的評価と社会的選択」および「社会科学の統計分析拠点構築」が採択され,精力的な研究が進められている。これはまた,博士課程の大学院生にRAなどの研究環境を提供し,教員と大学院生の密接な関係を通じて,大学院教育の面でも重要な役割を果たしている。

本報告書は,大学法人化がスタートして,2年目および3年目にわれわれが行ってきたさまざまな教育・研究活動を当事者の目から取りまとめたものである。このような自己点検や自己評価をウェブ上で公開することにより,多くの方々から忌憚のないご意見をいただきたい。本学部・研究科は,教育研究活動を改善する努力を今後も怠りなく持続する所存である。