I. 活動の基本方針

3. 入試制度改革

(1)大学院入試改革の背景

1998年の大学院部局化以後,大学院の定員および志願者・入学者は大幅に増加し,本研究科の修士課程だけで毎年80名前後が入学するようになった。それとともに,大学院進学の目的も多様化し,高度な専門性をもつ職業等を志望する学生の数が増加してきた。また,5年一貫教育システムの導入により学部と修士課程の連関が強化され,学部だけでは物足りないと感じる学生が修士課程で勉学を継続するケースも増えてきた。さらに,修士号を既に取得した社会人や外国人で,博士後期課程に編入学を希望する者が今後は増加すると考えられる。その一方で,優秀な研究者を養成し,学問を継承・発展させるという大学院の役割の重要性には,いささかも変わりはない。本研究科は,これまでも修士課程におけるコースワークの充実に努めてきたが,その経験から,研究者としての能力や知識の評価はコースワークを履修した後のほうが適切であるという認識を得るに至った。このような経緯により,本研究科では2005年度入試から大幅な制度改革が実施された。


(2)修士課程入試の基本方針

修士課程では多様な目的・動機をもつ学生を広く募集し,専門職志望,研究者志望等の目的に合わせたカリキュラムに従って体系的教育を行う。そのため,修士課程入試では,経済学部で習得しておくべき基本的な知識を有しているかどうかを問う選考を行うこととなった。修士課程入試では,次のような変更が行なわれた。

1) 従来2つに分かれていた修士課程の研究者養成コースと専修コースの入試を一本化する。
2) 大学院の授業を履修可能な基礎学力を備えているかどうかを判定するため,「基礎テスト」のみを課すこととし,試験科目は従来通り,i)ミクロ・マクロ経済学,ii)政治経済学,iii)統計学・計量経済学,iv)経済史,の4科目から1科目選択とする。
3) 英語試験は資格試験とし,TOEFLで550点以上(インターネット方式のテストでは79点以上)を得ている場合には英語試験を免除する。
4) 合否判定は研究者養成コースと専修コースを一括して行い,入学者の希望に基づいて2つのコースへ振り分ける。

(3)博士後期課程進学試験・編入学試験の基本方針

一方,博士後期課程進学・編入学試験では,研究者に適する能力と知識をもった学生を選考するため,研究者を志望する学生が修得しておくべき各分野の標準的な知識・分析手法を問う選考を行うこととなった。具体的には,次のような制度が2007年度進学・編入学者から導入された。

1) 研究者養成コースおよび専修コースの大学院生に対して,共通の進学要件を定める。
2) 新たに進学資格試験(Comprehensive Examination)を導入し,i)ミクロ経済学,ii)マクロ経済学,iii)政治経済学,iv)統計学・計量経済学,v)経済史,の5科目のうち1科目以上に合格することを進学の最低要件とする。この試験は,研究者を志望する学生が修士課程のコースワーク等を通じて修得しておくべき,各分野の標準的な知識・分析手法を総合的に問うものとする。実施時期は博士後期課程編入学試験と同時で,2月と9月の年間2回とする。各科目について,合計3回まで受験可能とする。
3) 博士後期課程編入学試験は,進学資格試験と同一の問題を課す。ただし,合否判定は別に行う。

(4)付随する大学院カリキュラム改革

1) 進学資格試験は,各分野について大学院コア科目とその他の関連する2,3の科目,および世界の標準的な大学院レベルの教科書をベースに出題される。したがって,これまで以上にコア科目を中心として講義科目の充実を図る。
2) 各教員が,博士後期課程のゼミ履修のために必要な進学資格試験および成績に関する要件を定め,「履修ガイド」に記載する。これにより,研究指導を受けたい教員のゼミで学ぶためには修士課程で何を準備すべきかが,学生に明瞭に分かるようにする。

(5)特別選考(AO入試)による社会人・外国人の博士後期課程編入学制度

1) 修士号を取得済みで実務経験のある社会人,および修士号を取得済みの外国人を対象に,特別選考(AO入試)による社会人・外国人の博士後期課程編入学制度を導入した。
2) 選考は個別審査とし,毎年7月から翌年1月までの間,随時出願を受け付ける。修士論文およびその他の論文等の書類審査と,口述試験により選考する。

(6)外国人留学生に係わる入試制度の変更

近年の国際化に伴い,海外からの留学生に対する選抜をより適正化する目的で,2つの入試制度の変更が実施された。

1) 在外公館推薦による国費留学生の選考を円滑に実施するため,在外公館で第一次選考に合格した学生を特別枠で選考する制度として「大使館推薦による国費留学生の選考」が新たに創設され,2005年度入試から実施された。
2) 特別選考による外国人の修士課程学生募集に関して,入学時点において日本滞在期間が2年を超えないことを条件とするように出願資格の変更が行われ,2007年度入試から実施された。これは,日本滞在期間が短いために日本語能力は劣るが経済学に関して知識水準は高いという外国人学生の特性を,より適正に判断できるようにすることを目的とした変更である。

(7)学部後期日程入試の改革

学生の教育においては,卒業という出口だけでなく,入学という入り口を考慮することも肝要であるという観点から,学部入試のあり方についても前向きに検討してきた。多くの大学,学部で分離分割入試の後期日程を縮小する方針を打ち出している中で,将来的にも後期日程を行うことを決定した。本学部においては,後期日程の受験生は前期日程とは母集団がかなり異なっている現状を踏まえ,理科系出身の受験生にも今まで以上に門戸を広げ,より多くの優秀な学生を確保するために,後期日程では外国語(英語)と数学の2教科による2次試験を,2009年度入試から実施する。