この研究プロジェクトは大きく2つに分かれる。第1は分析の共通基盤となる研究であって、WTO課題を整理・検討する元となるデータベースの構築ある。第2に、交渉・貿易・直接投資関連した理論的・実証的分析である。
1.データの基盤整備
- これは、研究領域内の他のグループの研究計画と重複する部分が多いので、その場合には他のグループの成果を最大限に活用する。ただし、国際経済の分野では各国別の分析だけでなく、それらを比較検討することが必要となるので、それを可能とする国際比較可能な理論とデータの基盤整備を総括的に行っていく必要がある。他のグループと協力してデータベース間の交換を整合的に行い、国際比較可能なデータベースの組み合わせ方を工夫する基礎研究を推し進める。この研究は、他のグループの研究のベースともなることから、他グループへのプラスの波及効果も期待できる。(木村・深尾)
2.具体的問題の整理・検討
- 直接投資の分析
最近の国際経済では、国際間の資本移動の一形態として、直接投資の重要性が飛躍的に増加している。特に、直接投資が受け入れ国側の雇用や技術移転にどのような影響を及ぼすかは、マクロ経済的に重要な問題であり、緊急の研究課題として求められている。まず、これらの問題を理論的・実証的に明らかにしていくと同時に、直接投資が他の国際資本移動とどれだけ異なる経済効果をもつのかを、データベースの整備を通じて分析する。その上で、WTOが直面している直接投資に関連した課題の整理・検討を行う。(木村・深尾)
- 国際貿易の分析
経済のグローバル化の進展にともない、従来のフレームワークでは十分に対処できない新たな課題が生じている。たとえば環境の問題に関連して生じている地球温暖化ガスの国際的排出権取引やコンピュータの普及による電子商取引の規制の問題である。このような新たな問題を分析できるような理論モデルの構築を行い、WTOが直面している貿易に関連した課題の整理・検討を行う。(石川・清野)
- 国際交渉の分析
貿易・投資の自由化をめぐってはさまざまな交渉が行われている。WTOでは特に多角的交渉を重視されているが、現実には2国間交渉、あるいは限定地域での交渉もよく見られる。ゲーム論を応用した交渉に関する理論モデルを構築し、交渉をさまざまな角度から検証する。また、WTOの存在意義自体も交渉の分析を通じて考察する。(石川・清野)
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