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世界の自由貿易の推進を目的とした貿易と関税に関する一般協定(GATT)の機能の拡大・拡充を目指して1995年に世界貿易機関(WTO)が設立された。WTOのもとでの初めてのラウンド(多角的貿易交渉)が来年からスタートしようとしているが、貿易と直接投資の拡大を通じて世界経済のグローバル化が急速に進むなか、WTOはGATT体制の時と比べてはるかに困難かつ多数の課題を抱えていると言える。

従来の関税引き下げ問題に加えて、たとえば、貿易と環境の問題、貿易と労働基準の問題、知的所有権保護の問題、直接投資や競争に関するルールの整備の問題、貿易関連投資措置の問題、紛争処理の問題などである。

これらの諸課題がどの程度今後の世界経済の発展にとって重要なのか、問題の本質は何なのかを経済学的見地から整理、検討するのが本研究の目的である。それによって、自ずから各課題の緊急性や解決方法も見えてくることになる。

上記のような課題の分析にあたっては、観察されるデータに基づいて、国外の制度の相互連関という観点から、さまざまな貿易取引や直接投資といった問題を共通のフレームワークを用いて理論的・実証的に分析することがきわめて重要である。しかしながら、伝統的に日本の国際貿易の分野では、理論的分析と実証的分析が独立に行われることが多く、世界経済が直面しているさまざまな問題を、同一の分析の枠組みを使って理論と実証の両面から分析する研究は少なかった。

そこで、本研究では,WTOすなわち世界経済が直面している諸問題を、国際比較可能なデータの基盤整備と、確固とした経済理論に基づいた制度分析を行うことによって、理論的・実証的に分析する。特に、海外の研究者と積極的に交流をはかることを通じて、これまでは日本の研究者が独自に行ってきた分析を、世界共通の分析基盤の形成を通じて、より普遍的に行うことを最終的な目標としている。

具体的な分析は、これまでこの分野で世界的な業績を残してきた研究者を中心に、世界共通の分析基盤となりうる分析フレームワークを理論的に明らかにしていくことが一つの柱となる。しかし、それと同時に、諸外国の研究者との共同研究を通じて、各国別のデータの共通の基盤整備とそれを利用した実証分析を積極的に推進していく。

なお、諸外国の研究者との共同研究は、内外の各研究者が個別に交流を行うことによって推進されると同時に、国際会議を他の研究グループと協力しながら定期的に行うことを通じて内外に公表していく予定である。現在のところ、われわれのグループが主体となって開催する国際会議は以下の2つを柱として考えている。まず第1は、米国のNBERと欧州のCPERと共同した国際会議で、原則として東京で開催する予定である。

この会議では、主として、WTOが直面している諸問題を、理論的・実証的に分析することを目的とする。第2は、若手を中心とした日本の研究者を米国で定期的に開催されるNBERの会議(国際貿易部門)に派遣することである。これは、国際貿易の分野において、NBERの研究者との共同研究を推進することで、日本の若手研究者の育成をはかると同時に、NBERという世界的に知られた経済学の研究機関を通じてわれわれの研究成果を積極的に公開していくことを目的としている。

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