経済統計部門は大別して統計学,計量経済学,ファイナンスの3分野から構成されている。ファイナンス分野は,2004年度から発足した5年一貫教育システムの一分野である「統計・ファイナンスプログラム」に関連して開講科目の大幅な拡充を行った結果,本部門の主要な分野の一つとなったもので,これまで金融工学教育センター(Center for Financial Engineering Education: cfee)を核として優秀な修士修了生を金融の現場に輩出してきた。いずれの分野も,経済現象など様々な現象に関する統計データを分析する手法の教育・研究に携わるものである。本部門の教育体系の特徴は,学部から大学院までの一貫した積み上げ方式にある。以下では経済統計部門の教育・研究について,分野毎に概説する。2017年度の4学期制の導入以降も,それ以前と同様に以下の科目や分野を中心に教育・研究を行っている。
統計学に関連する主要な講義科目としては,学部新入生を対象とした100番台必修科目の「統計学入門」,200番台科目の「確率・統計」,300番台科目の「統計学I・II」そして「経済統計論A・B」,400番台科目の「上級統計学Ⅰ・Ⅱ」,「確率論Ⅰ・Ⅱ」,「確率・統計特論A-F」がある。研究面では,時系列解析,生存時間解析,ノンパラメトリック解析,高次元データ解析等が主たる研究対象となっている。
計量経済学関連の主要な講義科目としては,200番台選択必修科目の「基礎計量経済学」, 400番台大学院コア科目の「中級計量経済学」と「上級計量経済学」そして「計量経済学特論A-F」がある。研究面では,マクロ経済活動を時系列的に実証分析する研究,パネル構造データの計量経済学的分析,構造変化の有無の検証などの研究が行われている。
ファイナンス関連の講義科目では,導入科目として300番台科目の「金融工学概論」,中級レベル以上として400番台科目の「ファイナンス経済論A・B」,「計量ファイナンスA・B」,「計量ファイナンス特論A-F」がある。研究面では,数理ファイナンス,金融工学,保険数理など多方面の研究が行われている。
上記3分野以外にも情報処理関連の講義科目として,300番台科目の「情報科学総論」を毎年開講している。この科目は数学教職課程科目「コンピュータ」を兼ねている。それ以外にも上記の3分野の講義の中で,計量経済学,統計解析,ファイナンス等におけるソフトウエア使用などの情報科学的側面や,その応用としてのベイズ的統計手法にもふれている。また,研究および教育面で,最近進歩の目覚ましい機械学習の手法も取り入れている。
以上のように経済統計部門は,統計学,計量経済学,ファイナンスの分野で活発に研究を行っている。さらに教育面では,経済学を学ぶために数量的な分析方法の知識が不可欠であるという認識から,学部生に対する必修あるいは選択必修的な講義および大学院生に対するコア講義を提供している。加えて,多くの学部生,大学院生の卒業論文,修士論文,博士論文での実証分析の基礎となる講義から,専門性のある講義まで,バラエティーに富む講義を提供している。
* 上記において「・・特論A-F」という400番台科目は,種々の専門的な内容を,経済学研究科での需要にあわせた形で提供するものであり,学生が最先端の研究内容に触れることも可能にしている。