地球規模での環境破壊や世界的な金融危機など、グローバルな経済活動に伴う様々なリスクは国際貿易・投資と深く関わっている。国際貿易・投資が、リスクの一因となったり、リスクを拡散・増幅させたりする。逆に、リスクが国際貿易・投資に大きな影響を及ぼしたりもする。これらのリスクは、直接的に経済に悪い影響を与えるとともに、個々の国の経済政策に影響を及ぼすことで間接的に国際的な利害対立を引き起こす可能性を秘めている。本研究の目的は、グローバル経済における様々なリスクを「国際貿易論」の視点から新たな切り口で分析することにある。

とくに、
(1)国際金融市場に関わるリスク
(2)グローバルな環境問題
(3)国際的な生産ネットワークの構築・運用に伴うリスク

といった緊急かつ重要なテーマに重点を置き、理論分析と実証分析の融合を図りながら研究を進める。

これらのリスクは、それぞれ独立したものではなく、お互いに関連していることを強調しておきたい。たとえば、国際金融市場でなんらかのリスクが生じれば、為替リスクやカントリーリスクなどに繋がり、国際的な生産ネットワークに影響を与える。そして、それが生産・消費・貿易に影響を及ぼすことで、環境にも影響を及ぼす。本研究では、3つのリスクの関連性に十分に注意を払いながら、グローバルなリスクを国際貿易・投資の枠組みの中で、綜合的に考察する。

とくに、経済リスクそのものへの対処に関する新たな知見を得るとともに、経済リスクを背景とした貿易制限などの国際間の利害対立解決のための示唆を得る。


前半の3〜4年間は、研究目的に記載されている3つの課題研究を中心としつつも、共同で現地調査を行い、それぞれのリスクに関する情報や問題意識の共有を図る。後半の1〜2年間で個々の分析を相互に検証しあうことによって、経済リスクそのものへの対処に関する新たな知見を得るとともに、経済リスクを背景とした貿易制限などの国際間の利害対立解決のための示唆を得る。

個々の課題の重要性を認識し、それらを有機的に結びつけるために、コンファレンスを初年度と最終年度に、中間報告のためのワークショップを3〜4年目に開催する。コンファレンスでは、研究の第一線で活躍している内外の研究者も招聘して、先端研究との連携も探る。分析では、理論モデルの構築とデータによる検証をバランスよく行うことで、理論と実証分析の融合を図る。実証分析においては、マクロデータに加え、細かい品目分類まで降りた国際貿易統計データを駆使する。