課題1:国際金融市場のリスクと国際貿易・資本移動との関連分析
リーマンショック後の世界的な金融危機は、金融市場の整備が経済発展にいかに重要かを再認識させることになった。 グローバルな金融市場を通じたリスクの伝播が世界経済に与える影響については、内外の研究者がその重要性を認識し研究を進めている。 しかしリスクの伝播は、金融市場のみならず貿易構造にも大きな影響を与える。本研究ではこれまでの研究のさらなる進展を図り、 特にリスクが政治構造や制度構造に影響を与え、それが世界経済や世界の貿易構造に与える影響を分析する。
課題2:グローバルな環境問題とリスクの分析
貿易や投資の自由化は特に途上国に経済成長をもたらしたが、急速な経済成長はしばしば環境の悪化を伴ってきた。 環境悪化がグローバルな場合には問題の解決は容易ではない。また、地球温暖化は気象の著しい変化をもたらし、大規模災害のリスクを高めうる。 本研究では、これらの問題の解決に向けて、開放経済化における従来の環境問題や環境政策の分析に経済発展の程度や制度・習慣などの国際的差異を明示的に導入して、 分析をより現実に即した形で発展させ、有益な政策的含意を得る。
課題3:国際的な生産ネットワークに伴うリスク分析
東アジア経済では、企業内・企業間取引を綿密に組み合わせた国際的ネットワークが構築されている。 これまでの理論的・実証的研究で、 このような生産ネットワークの構築および運用においては、為替リスクやカントリーリスクが大きな影響を与えうることが指摘されている。 本研究では、様々なリスクが企業立地や生産ネットワークの形成にどのような影響を及ぼしうるのかについて検証する。 東アジアに加えて北米における輸出入企業の取引関係とそれに対するリスクの影響も分析することで、生産ネットワークの展開のあり方を検討する。 また、国際産業連関表を用いて、海外での需要拡大が日本で生産された最終財・中間財需要や国内の雇用に及ぼす影響も分析する。
課題4:大規模災害リスクとグローバリゼーションとの関連分析
人為性を含む大規模災害は企業活動に深刻なリスクをもたらす。 本研究では、主に途上国を対象として、インフラストラクチャー制約に伴う「大規模災害への脆弱性リスク」などに焦点を当て、 グローバル化と大規模災害がどう関連し、貧困にどのような影響を与えるのかを解析する。リスクの回避のみならず、危機・被害からの復興にも焦点を当てる。 世界的な危機や災害の被害をどう最小限に食い止めるか、どうリスクを軽減するかという問題に対しては、国際経済学の視点のみならず、空間経済学的視点も導入し、有益な政策提言を導く。